出来ればかかってきて欲しくない、かかってきても出たくないクレームの電話。でも、もしあなたが応対することになっても、正しい対応方法がわかっていれば、恐れるに足りません。
クレームの電話がかかってきた! どうする!?
クレームの電話は、できれば取りたくないと思っている方も多いのでは、ないでしょうか? その場に担当者がいれば、「担当者に代わります」と言えば済むのですが、あいにく担当者は不在という場合、そのクレームの電話はあなたが対応することになります。
クレームの場合は、もちろん大なり小なりお客様は、怒りを抱えていらっしゃるわけですから、対応が悪いと、さらに火に油を注ぐなんてことにもなりかねません。クレームの電話をかけてこられる方は、お客様や取引先、あるいは社内の人間ということもあります。大切な取引先を失い、会社に甚大な被害を及ぼすということも考えられます。
きちんと対応できるように、クレーム対応の基本から見てみましょう。
いきなりピンチ! 担当者が不在
お客様にとっては電話に出た相手が誰であれ、その企業・組織の人間であることには変わりはありません。自分のせいじゃないのに、他人の失敗について謝罪するなんて、「納得いかない!」なんていう人もいると思いますが、誠心誠意対応しましょう。
あなたの対応が良くなかったがために、もっと大きなクレームに発展すれば、あなたの信用が失われることになります。せっかく買った製品に不具合があったり、お金を出して受けたサービスの内容が悪かったりしたら……。自分がお客様の立場に立てば、どんな気持ちになるか想像がつきますね。
クレームは決して、あなたに向けた個人攻撃ではなく、会社としての対応が求められているわけなので、クレームの電話があったということは逆に名誉挽回のチャンスを与えられたということ。なんとか、お詫びの気持ちを伝えたいという誠意を持って、対応しましょう。
■担当者が不在の場合
では、実際に担当者が不在の時の対応の仕方を見てみましょう。
「ただ今、あいにく担当者が外出しておりますので、大至急連絡を取り、あらためて折り返し、お客様へご連絡をさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?」とお客様の意向を聞き、即座に担当者に連絡を入れます。
ただし、お客様がいきなり話始めたら、聞き終わってから、「責任を持って、担当者に伝えます」とはっきり言い切り、言葉通り、きちんと内容とお客様の様子を伝えること。わからないときは、「それ以上のことは、私ではわかりかねますので、○○から返事をいたします」と、きちんと「どうします」と伝えるのが大事です。
後で担当者がもう一度電話をしたときに、「どういった内容でしょうか?」と同じことを話させることのないように。「また同じことを話させるの?」と怒りも倍増します。担当者ではなく、「責任者出せ!」という2次クレーム発生の元になります。
自分で対処できることであれば、問題ありませんが、もし自分1人で解決するのが難しいと感じたら、周囲の人間に相談しましょう。先ほども述べましたが、わかっているフリは絶対にしません。そんなときは、詳しい人に電話を替わってもらう方が誠実です。
クレーム電話の対処法:基本編
■話の内容をきちんと聞く
お客様に「誠意」が伝わるように、きちんと話を聞きます。大切なのは、「おっしゃる通りです」「お気持ちわかります」など、共感しながら話を聞くことです。お客様に「受け入れられた」と感じていただくことが大切です。そして、この人はわかってくれるという安心感を与えるようにしましょう。
しっかり耳を傾けながらも、メモを取り、内容をきちんと把握するようにします。お客様が何に対して怒っているのかを知ることが大事です。それをちゃんと把握できなければ、正しい対処はできません。
■お詫びする
こちらに非があるかどうかわからないうちは、「謝罪してはいけない」という欧米流の考え方もありますが、不快な気持ちにさせてしまったことは事実。そのことに関しては、以下のようなお詫びを言いましょう。
- ○○様をご不快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ございませんでした。
- ご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした。
- 説明がいたらず、申し訳ございません。
- せっかくのご信頼にお応えすることができず、申し訳ございませんでした。
ただし、「全て当社の責任です」「責任を持って対応させていただきます」など、クレームの内容をきちんと把握しないままに、全面謝罪はしないようにします。無責任な発言によって、後からもっと大きなトラブルになる可能性もありますから、注意してください。あくまでも、不快な気持ちにさせてしまったことへの謝罪にとどめてます。
お客様の怒りは、どこに向いているのか、何を求めているのか(謝罪、商品の交換・返品、修理、治療費にかかる支払いなど)を察することが大事です。そして、迅速に対処するべく行動を起すわけですが、その前に自分が処理できる問題なのか、他の担当者に代わってもらうべきなのかを正しく判断しましょう。
■気遣いある言葉をかける
商品を購入された方が、「○○を買ったんだけど」とおっしゃったら、すぐに「ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えます。
怪我をされたお客様の場合は、まず「お怪我の具合は、いかがですか?」などお客様を気遣う言葉をかけるようにします。
■お互いにクールダウン
「少々、お時間をいただけますでしょうか」と一度電話を切り、クレームの内容を整理し、解決先・対応策を考えるのも一案。一旦電話を切る旨を伝える際、必ず「いつ頃、電話をするか」も伝えるようにします。
ちゃんと対応するという姿勢を見せたことで、お客様の気持ちはずいぶんとすっきりとしてくるものです。従って、クールダウンする場合は折り返しの電話をするのが遅すぎて新たな怒りを生んでしまう危険性も考えられるので、解決策を考えるのに十分かつ、対応として遅すぎないタイミングで必ず折り返すようにしましょう。
■最後に
何らかの解決法・対処法を提示した後は、「御指摘をいただき、ありがとうございました」「ご連絡をいただき、ありがとうございました」とお礼の気持ちを伝えます。そして、「今後、このようなことのないように十分注意いたします」と誠実さを伝えるようにしましょう。
通常のクレームなら、ご紹介した「クレーム対応の基本」で対応できるはずです。
次に、イマイチの対応で怒りを倍増させてしまった場合の対応策を見てみましょう。
これでは怒りのレベルもマックスに!
■電話をたらいまわしにしない
「○○の部署に代わります」「担当者に代わります」など、たらいまわしにしたり、対応する人が何人も変わると、不愉快レベルは一気に急上昇。担当者がいない場合は、「私、○○が責任を持って、お話をうかがいます」など、自分は責任者でも担当者でもないけれど、「この件は、責任を持って担当者に伝えます」と言うだけで、お客様に安心感を与えられます。
■反論、言い訳をしない
一方的に話しをされると、思わず言い訳をしたくなりますが、こちらが言い訳から話しを始めては逆効果。まずは、内容の聞き取りに集中し、言い訳や反論はしないようにします。そして、こちらに全く非がない場合には、相手が完全に話し終えてから事情の説明を行います。
「そう、おっしゃられても……」「その者も急いでいたんだと思います」など身内をかばうような言葉は、あらたな怒りに火をつける可能性があります。きちんと対応すれば、10分ほどで済むかもしれないことが、延々1時間以上の電話になる可能性もありますし、また、口頭での謝罪で済むはずだったことが、上司と一緒に直接訪問して謝罪しなくてはならない状況にもなりかねません。
気持ちをこめるという意味で、たとえ他の仕事中であっても、手をとめて全身全霊で対応するように心がけましょう。何かの作業をしながら、片手間に対応するなんてもってのほかです。
■勝手にお客様の怒りの度合いを判断しない
怒りを静かに表す方、激しい言葉や態度で表す方など、お客様の性格や状況によってそのクレームの仕方はそれぞれです。怒鳴ったりしていないから、「そんなに怒っていないのだろう」「そんなに大した問題ではないのであろう」、「怒鳴るなんて騒ぎすぎ」などという判断は、決してしないでください。お客様の話の内容をしっかり聞いて、事実の確認、状況の把握をするようにつとめてください。
■曖昧なことを言ったり、ごまかしをしない
クレームの内容や会社の方針が、わからないのであれば、適当に判断してはいけません。なぜなら「出来もしないことを出来ると言ったのか!」とあなたの勝手な判断によって、さらに大きなクレームに発展する可能性もあるからです。
■待たせない
電話をかける前から不快な気持ちでいるわけですから、さらに保留などで待たされることによってさらに印象は悪くなり、解決するものも解決しなくなります。事実関係の把握や確認に時間がかかるようであれば、理由を説明し、放置しないようにします。電話を保留にしたまま長い時間待たせることはもちろん、折り返して電話をかけるときも30分以内にはかけ直すようにします。
■お客様を怒らせてしまう、言ってはいけないNGワード
- いいえ、違います
- そんな、はずはありません
- そうは、おっしゃいますが
- わかりません
- それは、できません
担当者が不在の場合、お客様が怒り心頭の場合など、「どうする!?こんなとき」を見てみましょう。
どうする!? こんなとき
■お客様の勘違いだったとき
クレームの内容を聞くうちに、実はお客様の勘違いだったことがわかるケースもあります。そんなときは「なんだ、あなたの間違いじゃない」というような態度は厳禁です。勘違いは誰にでもあります。あくまでも、お客様の自尊心を傷付けないように「誤解であることがわかって、安心致しました」という態度で接するようにします。
■お客様の怒りのレベルがマックス
先ほど、勝手にお客様の怒りの度合いを判断しないと述べましたが、それでも時には、むちゃなことをおっしゃる方、いきなり怒鳴って電話をしてこられる方もいらっしゃいます。矛盾した話をする方もいるでしょう。そんなお客様であれば、あるほど電話を受けた側は「冷静」でいるように心がけましょう。怒りをとにかく吐き出して、おっしゃりたいことをおっしゃってしまえば、お客様の気持ちはずいぶん楽になります。
相手が感情的にまくしたてているときにこちらが反論して言い負かしてしまうと「もう、いいっ!」と電話を切られてしまいかねません。それでは、お詫びの気持ちが伝わるどころか、今後利用したり、商品を購入していただくことは二度とできなくなります。とにかく「聞く」ことに徹します。そして、お客様の怒りが静まってきたところで丁寧に事情を説明したり、事実の確認をするようにします。
一生懸命耳を傾けても一向に怒りが収まらない場合も、もちろんあります。基本的には担当者、電話を受けたものが責任を持って対応しますが、どうにもならない状態の場合は、上司に出てもらいましょう。
■どんなクレームにも、誠心誠意で
電話でのクレームの場合、お客様の表情は見えませんが、声のトーンや話し方からお客様がどれだけお怒りか、または残念に思っていらっしゃるかが伝わってきます。逆に、こちらの気持ちも電話を通して、伝わっているということになります。
言葉だけの謝罪だけではなく、心からお詫びをする気持ちがあれば、自然と受話器を持ったまま頭が下がっていることでしょう。謝罪の言葉を何度も何度も述べているのに、お客様の気持ちがおさまらないというとき、本当に自分が心から「申し訳ない」という気持ちで接しているか、考えてみてください。
「私は担当者じゃない」「私は本当は悪くない」という気持ちが少しでもあれば、あなたの言葉や話し方や態度に出ているはずです。実際には、見えなくてもあなたの態度は、相手に伝わっていますよ。
クレームの対応がきちんとしていれば、逆に会社に対する印象が良くなることもあります。「もう一度使ってみよう」「もう一度利用してみよう」と思っていただけたら、あなたのクレーム対応は◎です。
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