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報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の基本

「報告」「連絡」「相談」をただ伝えるだけでなく、相手に理解してもらうことが肝心です。今回はその目的と必要な理由、それぞれの心構えや要点・注意点、言葉遣いを説明します。

ビジネスマナーの「ホウレンソウ」は、よく「仕事の動脈」「組織の血液」に喩えられます。ご存知の方も多いと思いますが、「ホウレンソウ」とは、仕事をスムーズに進めるために欠かせない「報告」「連絡」「相談」の略です。

私達の体は、新鮮な血液が体中に循環しないと、大病を患うことになります。ビジネスパーソンおけるホウレンソウは、その血液に喩えられるほど、とても重要だということです。ただし、ビジネスマナーを無視したホウレンソウは、相手に正しく伝わらないことがあります。報告も連絡も相談も、ただ伝えるだけでなく、きちんと理解してもらうことが肝心です。そのために、ホウレンソウにもマナーが必要なのです。報告・連絡・相談の目的と必要な理由、それぞれの心構えと要点・注意点、言葉遣いを説明します。

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報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の目的と必要性

まず、報告・連絡・相談の違いを説明しておきましょう。

■報告
報告とは、上司からの指示や命令に対して、部下が経過や結果を知らせること。報告をするのは、部下から上司へ、あるいは後輩から先輩へ、という流れになります。

■連絡
連絡とは、簡単な情報を関係者に知らせること。そこに自分の意見や憶測は入りません。また、上司や部下にかかわらず、誰もが発信側にも受信側にもなります。総務や人事から全社員に向けての連絡やプロジェクトリーダーからメンバーだけに向けた連絡など、様々な連絡があります。

■相談
相談とは、判断に迷う時や意見を聞いてもらいたい時などに上司や先輩、同僚に参考意見を聞き、アドバイスをもらうことです。

こういったホウレンソウのないオフィスは、上司と部下の「上下」の意思疎通も、スタッフ間の「横」の意思疎通もがうまくいかず、仕事の効率は悪くなるでしょう。その結果、トラブルが続出する可能性が高くなります。これでは、まるで会社が動脈硬化に陥っているようなもの。そのままにしておくと、会社の業績は悪化しかねません。オフィスに活力がなくなり、あなたの仕事へのモチベーションも下がるかもしれません。

反対に「ホウレンソウ」が徹底されているオフィスは、報告によって上司と部下のコミュニケーションが密になり、連絡によって先輩や同僚、後輩などスタッフ間の意思の疎通もうまく進むでしょう。そして、上司や同僚、部下と相談しあうことで新たなアイディアが生まれたり、悩み事が解決できたりするでしょう。こうして活力という血液が、社内に循環するのです。体でいえば、心身ともに健康な状態です。

的確なホウレンソウは、仕事を正確にスムーズに運ぶためだけに必要なのではありません。ミスやトラブルを未然に防ぎ、また仕事の効率をアップする目的のためにも必要なのです。会社に活力を与え続けるためにも欠かせないものなのです。

「報告」をする側の心構えと要点・注意点

1.相手の都合を確認する
多忙な上司に時間を割いてもらうわけですから、都合を確認するのはビジネスマナーの基本。先輩や同僚への相談も同様ですね。

急ぎの報告ではない場合は、相手の状況を見て報告をあとにするか、メモに書いて伝えるなどの方法をとりましょう。

2.指示した上司に直接報告する
他人を介して報告するのは、報告とはいえません。あなたに指示をした上司に直接報告するのが義務。これもビジネスマナーの基本です。

3.重要な報告はすぐに行なう
上司が忙しそうだからといって報告が遅れると、仕事に支障をきたすことがあります。対策を講じるなど一刻も早い判断が必要とされる報告や、関係者にすぐにフィードバックする必要のある内容の場合、すぐに上司に直接報告しましょう。

4.結論を先に伝える
上司は、まず結果を知りたがっています。前置きはできるだけ短く、途中の経過説明や原因、分析は、相手から求められたら詳しく話すようにしましょう。なお、できなかった言い訳や苦労話は、基本的には不必要です。

5.「事実」と「意見・憶測」は分けて報告する
注意すべきことは、客観的な事実を正確に伝えること。自分の意見や憶測を話す場合は事実を報告し、そのあとで「これは私の憶測ですが……」「あくまでも私見ですが……」と断ってから伝えましょう。事実と憶測、意見や願望を一緒に報告すると、上司の判断を誤らせてしまうことになりかねないからです。

6.口頭か文書での報告かを選ぶ
急いでいる場合やごく簡単な内容の報告の場合は、顔を合わせて口頭で伝えるのがよいでしょう。相手が出張中なら電話で報告するのが確実です。

報告する内容が複雑な場合、データや図表など適切な資料を添えて上司が理解しやすいように説明しなければいけません。その際は、先に口頭で結論だけ話し、できるだけ早く文書による報告を行ないましょう。

7.こまめに報告する
例えば「予定より時間がかかりそうな時」、反対に「予定よりも早く終わりそうな時」は、仕事が終わってから報告するのではなく、事前に報告しましょう。あなたに指示を出した上司は、全体の進捗を見渡し次の段取りを考えながら仕事を進めています。仕事の見通しを把握している上司は、他の人にあなたのヘルプを頼んだり、あなたを周囲のヘルプにまわらせることもできるのです。

長期的な仕事の場合は、1日に1度、あるいは仕事の区切りごとに進捗状況を報告しましょう。上司は、全体と個々の進み具合の両方を見ながらプロジェクトを運営しています。中間報告は、お互いが安心して仕事を進めるために大切な報告なのです。

8.ミスやトラブルはすぐに報告する
ミスを犯した時、トラブルになりそうな時、あるいはやトラブルに遭遇した時は、すぐに上司や先輩、同僚などに状況を報告し、情報を共有するようにしましょう。的確な対処法を助言してくれたり、冷静な判断を下してくれたりするのは、やはり経験に長けた人たちです。素早い報告が、ミスやトラブルを最小限にとどめることにもつながります。

9.報告する際にメモを持参する
報告を聞いた上司は、それをもとに軌道修正を指示したり、次の戦略を伝えたりすることがあります。重要な事柄は必ずメモを取るようにしましょう。これは上司からの指示や命令を受ける時や「相談」をする際にも必要なビジネスマナーです。ぜひ習慣化しておきましょう。

「連絡」の心構えと要点や注意点

連絡は伝える相手が上司や同僚、部下にかかわらず、あなたが発信者になったり、受信者になったりします。連絡したり、連絡を受けたりする際の心構えと要点・注意点を説明します。

1.曖昧な言葉は使わない
「雨が降っても営業部の花見は開かれるみたいだ」「次の会議は、今月中に開かれるようです」といった曖昧な連絡は、聞いた者が混乱します。そもそも、伝える本人がわからないまま、上司や同僚に連絡を伝えるのは相手にとって失礼な話です。決定なのか未定なのかを確認したうえで、できるだけ正確に伝えましょう。注意すべき点は、あくまでも事実だけを伝えるということです。個人の憶測や願望を盛り込むと、事実がねじまがって伝わりかねません。

2.内容に関係なく迅速に連絡する
連絡はできるだけ早く関係者全員に伝えましょう。その際、なるべく直接伝えるようにしてください。第三者に伝言を依頼した場合、内容が正しく伝わらなかったり、遅れて伝わったりするからです。社内の連絡は、仕事です。責任感を持って臨んでください。

3.連絡すべき順番を意識する
歓送迎会や健康診断などの連絡はさておいて、連絡内容によっては最初に上司に伝えるのがよい場合があります。仕事の全体を見渡している上司にとっては、その連絡がとても重要な情報となる場合があるからです。内容によって、連絡を伝える順番を意識することが肝心。

4.関係者全員に伝える
たとえば「私は、歓迎会の日時を聞いていませんでした」「部長が今日から長期出張だということは、私の耳には入っていませんでした」といったことが起こると、社内の人間関係がギクシャクします。

連絡ミスのないように連絡しなければいけない関係者のリストをつくって、誰に連絡したか、していないかをチェックし、関係者全員に連絡したことを確認しましょう。細かなことですが、これもビジネスマナーの基本です。

「相談」の心構えと要点や注意点

1.疑問が生まれたら相談や質問
疑問や心配事を抱えたままで仕事を進めると、効率や質が低下します。わからないことや疑問が生まれたら、その都度上司や先輩に相談したり、質問したりしましょう。最もよくないのが、自己判断で勝手に進めること。周りの人に迷惑をかけてしまう結果につながるかもしれないからです。

2.最初に相談するのは直属の上司
「指示が理解できない」「こういった場合は、どのように対処すべきなのか」といった具体的な相談は、その仕事を指示、命令した直属の上司でなければ即答できないことが多くあります。ですから、最初に相談するのは、直属の上司です。

3.アイデアやプラン変更は準備を整えてから臨む
仕事を進めていくうちに、効率のよい他の方法に気づいたり、新たなアイディアを思い付いたりすることがあります。こういった時こそ相談が有効です。建設的な相談や提案が組織の「活力」につながり、会社にフィードバックされた時、あなたの評価は上がり、信頼を得られることでしょう。

ただし、「なんとなくそう思う」では、説得力に欠けます。相談を持ちかける際、提案の根拠となるデータや裏付けを用意しておくと、相手は真剣に耳を傾けてくれます。「改善策」や「軌道修正案」の場合は、文書でまとめておくのがよいでしょう。

ホウレンソウの言葉遣い

■いま、お時間よろしいでしょうか
突然上司に駆け寄って、報告や相談を始めるのではなく、「いま、お時間よろしいでしょうか」と、相手の都合を確認したうえで話を始めるのがビジネスマナーの基本。その際、先に具体的な用件を述べることが肝心です。例えば、「営業企画の件でご報告したいのですが、いまお時間よろしいでしょうか」と始めるのがよいでしょう。

■どうぞご覧下さい
報告書を提出する場合も同じです。「○○の案件をまとめた報告書です。どうぞご覧ください(ご一読ください)」「○○の案件をまとめた報告書です。目を通して頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」といったように、必ず敬語を使って用件を述べてください。

■「お蔭様で」「残念ながら」のビジネス枕詞や、クッション言葉
内容に応じて、ビジネス枕言葉やクッション言葉を使い分けましょう。例えば、「成功した」「失敗した」と報告する際には、「お蔭様でイベントは成功しました。動員人数は……、売上高は……」「誠に残念ながら、イベントは失敗に終わりました」と切り出しのがスマートな言葉遣いです。この「お蔭様で」や「誠に残念ながら」といった言葉を文頭に置くだけで、報告を受ける側は、おおよその内容をすぐに把握できるというメリットがあります。

メールによるホウレンソウの注意事項

時間や場所を選ばないことや、同時に複数の相手に届けられることから、ホウレンソウの手段として定着したメールですが、同時に弊害も生まれています。

1.送信=報告や連絡ではない
送った側は「メール送信」=「報告を終えた」「連絡した」と思い込みがちですが、相手がメールを見て内容を理解するまで、報告や連絡はまだ終わっていません。特に重職にある上司は、送られてくるメールの量があまりにも多くて、あなたのメールを見落としているかもしれません。「伝えた」つもりが、1週間経っても上司に「伝わっていなかった」といったこともあります。

2.メールを使わない方がよいケース
隣の席の人へ口頭でならすぐに伝えられるのに、わざわざメールで連絡する人が増えていると聞いています。もらった側は、「オフィスで長時間直接顔を合わせているのに、どうしてすべての連絡がメールなのか」と、不可解な思いを抱くのではないでしょうか。すぐに伝えなければいけない報告や連絡の場合、直接顔を合わせて伝えるか、電話で伝えるのが確実です。

3.「受け取った」という返信は迅速に
メールによる「ホウレンソウ」を受信した際のマナーは、当然のことながら「返信」を送ることです。先に説明したように、送信したからといって相手がメールをすぐに見ているとはかぎりません。

送った側は、「返信」があるまできちんと届いたのか、そして正しく伝わったのか常に不安な状態です。ですから、メールによる「ホウレンソウ」を受信したら、必ず「メール受け取りました」「承知致しました」といった簡単な返信だけでも、できるだけ早くしましょう。すぐに回答できない複雑な報告や依頼の場合は、「内容を検討してから、改めて連絡します」と一言添えて返信するのがマナーです。

「ホウレンソウ」は、「とにかくどんな方法でもよいから、相手に伝えれば終了」というわけではありません。タイミング、スピード、伝え方は、ビジネスマナーに準じていなければなりません。そして、聞き手、読み手のことを考え、思いやりの気持ちを忘れずに伝えなければいけません。

大切なのは、相手に正しく理解してもらうよう、わかりやすく手短に伝えること。それだけに、普段から迅速かつ正確に意見や情報を「伝える技術」を磨くことが求められているといえるでしょう。